静かに黙々と。息の合った動きで、仕事が進められていく工房内。2009 年に窯を開いた当初から、夫婦二人で作陶してきた工房十鶴の柄溝康助さんと聖子さんは、お互いの個性を生かして、作品づくりに取り組んでいる。
美しい仕上がりのイッチン盛りのマカイ(茶碗)は聖子さん、勢いあるタッチの絵が目を引くお皿は康助さんが。見る人が見れば、どちらが手がけたのか一目で分かるが、工房十鶴としてのやさしい雰囲気は保たれている。大阪府出身の康助さんと読谷村で生まれ育った聖子さんの出会いは、北窯での修業時代だったそう。夜遅くまでろくろ挽きの練習に励む中、お互い励ましあうことで絆は深まった。「お互いに意見を言いやすいのは夫婦のメリットでもありますね」と笑って話す二人。時にはぶつかることもあるというが、そこは夫婦間のやりとりなので、後には引かない。「重たい道具を運んでくれたりと助かります。なんだかんだ言っても二人だと楽しいです」と聖子さん。康助さんは、「北窯を辞めるとき、親方からは『まだ早い』と止められましたが、『聖子が一緒なら大丈夫だな』と許してくれました。今でも彼女は僕の先生ですよ」と奥様への感謝の思いを語った。沖縄では昔から、二人のように夫婦が力を合わせて作品を手がける工房は珍しくない。食卓で使えばどこかほんのり温かく感じるのは、こういった家族愛を通して生まれたうつわだからなのかもしれない。