時計の針が12 時を回った頃、読谷村立北保育所の各部屋からは、「いただきます!」という元気いっぱいの声が聞こえてきた。この日の献立は、園児たち自ら掘り起こしたじゃがいものそぼろ煮、切り干し大根サラダ、卵スープ、押し麦ごはん。うつわはすべて読谷村の陶工が手がけたヤチムンが使われている。
小振りなかわいいマカイ(茶碗)や少し深めの丸皿を両手でしっかり持って自分の席に運ぶ園児たち。落とさないように、ゆっくりゆっくり運ぶ姿が何ともかわいい。うつわは、多数の窯から仕入れているため、統一感はなく柄や色は様々。「バラバラなのはいいことですよ。子どもたちが自分の好きな色、好きな柄を選ぶことで自主性が育ちます」と話すのは、保育所の給食でヤチムンを使うために尽力した、元所長の上地洋子さん。「ヤチムンを使い始めて今年で35 年になりますよ。当時はプラスチック製のお皿を使っていましたが、読谷村が焼き物や織物などの工芸を広めることに力を入れていたこともあり、焼き物を給食で使えないかと考えて、交渉を進めました。『重たい』『割ってしまう』といった反対の声もありましたが、陶芸家の先生をお招きして、『割れることで物を大切にする心が育つ』といった、焼き物を使うことのすばらしさを語っていただいたことで、実現につながりました」。お代わりの列に並ぶ、食欲旺盛な子どもたちの笑顔を見ていると、ヤチムンが子どもたちの成長に一役買っているようにみえた。